※本ページはプロモーションが含まれています

育児と仕事を両立!女医の復職支援プログラムと育児短時間勤務制度

女性医師の数は右肩上がりで増え続けており、医師国家試験の合格者の3分の1以上を占めるようになりました。しかし、女性の割合が高くなるに比例して、「結婚後の出産・育児という母としての仕事と、医師としての仕事をどうやって両立させるか」という課題も浮き彫りになってきました。

研修で現場の感覚を取り戻しましょう

特に勤務時間が長く、オンコールも少なくない外科系の診療科、あるいは長時間勤務が当たり前となっている大学病院などの高度医療機関では、出産を機に退職せざるを得ない女性医師が相次ぎ、出産後も勤務が可能な職場環境をいかに整備するかが課題となっていました。

「子供がある程度大きくなるまでは、一緒にいる時間を増やしてあげたい。しかし、臨床から遠ざかる間に最新の医療についていけなくなるのも不安…」というジレンマを解消すべく、全国の医療機関で導入が進められているのが、育児中でもブランク期間を生じさせることなく、正職員のまま勤務時間を短縮する「(育児)短時間勤務制度」です。

医療機関や医局によって制度に差はありますが、基本的にフレックス勤務、外来勤務に限定、負担の多い日・当直勤務の免除など、柔軟な勤務体制などのメニューが用意されています。

育児が落ち着いたら、勤務時間を徐々に増やしていけば、生活のリズムを崩すことなく、常勤医師として復帰することができます。ただ、「自分の勤務時間が短くなるせいで、他の医師に迷惑をかけてしまうのでは…」との気持ちから利用をためらってしまうという話も耳にします。

しかし、医師不足でフル勤務の人がなかなか雇えない状況の中で、病院にとっても、こうした女性医師が務めてくれる利点を大きいのです。各病院長が率先するかたちで、女性医師が働きやすい環境を整えるとともに、上司や他の医師に理解が得られやすい意識作りの醸成を行っており、心配する必要はありません。

近年は育児支援の一環として、院内保育所や、風邪などで院内・院外の保育所に預けられない子供たちを預かる院内病児保育室を完備している医療機関も増えてきました。

将来結婚をして、出産後も離職期間を生じさせることなく、医師の仕事を続けたいとお考えの方は、これら制度が整った医療機関は転職先の有力な選択肢の一つとなるでしょう。

しかし、短時間勤務制度を導入しているのは、経営基盤が安定してる都市部の大型病院であることが多いため、出産や育児でどうしても臨床の現場を離れざるを得なかった医師も大勢います。

ブランク期間が短い場合は問題ありませんが、出産や育児の場合は、数年のブランクが生じるのが普通ですので、生活習慣病やオンコロジー領域で続々と登場する新薬、診療ガイドラインの改訂、医療機器の高度・複雑化などを考えると、臨床現場に戻ることに二の足を踏んでしまうこともあるでしょう。

このような状況を受け、女性医師の職場復帰を促進する目的でスタートしたのが、全国の医療機関や自治体、転職支援会社などが共同して行っている、女性医師の「復職支援プログラム」です。

復職支援プログラムの内容は、復職を考え始めた方を対象としたシンポジウムやセミナー、そろそろ当直に戻ろうと考えている方を対象に、患者急変時の対応や麻酔技能を1日かけて学ぶ「短期トレーニング」、働きながら臨床感覚を取り戻したい人を対象とした「ワーキングコース」、さらには復職希望者のスキルに合わせたオーダーメイドの研修プランを立て、再研修の場所を提供し、復職先の紹介までを無料で行うところまで、実に幅広いラインナップになっています。

そのほか、東京女子医科大学の「女性医師再教育センター」は、お住まいの地域と時間を選ばずにいつでも最新の医療情報を入手・学習できる「e-ラーニング」も行っています。

医療系の人材紹介サイトでは、ブランクのある女性医師の皆さんが無理なく臨床現場に復帰できるように、「保育所あり」「当直なし」「短時間勤務が可能」「ワークシェアリングを導入」など、働きやすい条件の求人や実際の体験談などを多数掲載しているところもありますので、それらを参考にしてみるのも一法でしょう。

下のリストは、出産や育児、介護などが理由で臨床の場を離れた医師の皆さんの職場復帰を支援している医療機関や医師会が運営するドクターバンク等のホームページのリストです。

項目の最後のセミナー欄に◎印は、ブランクを取り戻すための実技や最新の医療事情を集中的に学ぶことができる「復職支援セミナー・プログラム」を開催(定期・不定期)していることを示しています。

医療現場の深刻な医師不足を解消するため、リストに掲載している以外にも多くの医療機関や団体がセミナーやプログラムを用意しています。

地域病院・団体名住所セミナー
日本医師会 女性医師バンク
福島県 福島県立医科大学 福島市 光が丘
新潟県 医務薬事課 勤務医等確保対策室
長野県 医療推進課 医師確保対策室
栃木県 自治医科大学 女性医師支援センター 下野市 薬師寺
茨城県 筑波大学附属病院 つくば市 天久保
東京都 東京医科歯科大学 文京区 湯島
東邦大学医学部 女性医師支援プログラム 大田区 大森西
東京女子医科大学 女性医師再教育センター
東京西徳洲会病院 昭島市 松原超
千葉県 東京女子医科大学 八千代医療センター 八千代市 大和田 新田
埼玉県 埼玉県女性医師支援センター さいたま市 大宮区 吉敷町
埼玉医科大学総合医療センター 川越市 鴨田
大阪府 星ヶ丘厚生年金病院 枚方市 星丘
徳島県 徳島大学病院 徳島市 蔵本町
岡山県 岡山女性医師キャリアセンター
倉敷第一病院 倉敷市 老松町
山口県 下関市立中央病院 下関市 向洋町
山口大医学部付属病院 宇部市 南小串
福岡県 福岡輝栄会病院 福岡市 東区 千早
鹿児島県 ドクターバンクかごしま
沖縄県 琉球大学医学部付属病院 中頭郡 西原町 字上原

毎週の勤務時間を満たせば自由に働ける藤田保健衛生大学病院

2022年の医師国家試験の合格者(9222人)のうち、女性は33.6%(3039人)を占めており、年々、女性の合格者数は伸びを見せています。しかし、病院や診療所で働く女性医師の割合は29歳以下の36%がピークとなっており、30代から減少しています(厚生労働省の調査データ)。

東海地方の大学病院で同様の動きが加速

この数字は、女性医師が結婚後も育児と仕事を両立できる職場環境が整備されていない医療機関が依然として多いことを示しています。

厚生労働省では、育児や勤務時間など30代の女性医師の悩みに関する相談窓口の新設や、育児で休職を余儀なくされた方を対象とした復職研修の導入などを行う医療機関に地方自治体を通じて経費を補助する「女性医師就労支援事業」を2008年にスタートさせ、現在全国36都道府県が補助金を受けています。

「家庭も大切だけど、一生の仕事として選んだ医師を継続したい」という声が増えているなか、愛知県豊明市の藤田保健衛生大学病院では、2013年度から子育てや介護などで時短勤務を希望する女性医師に対して、毎週の勤務時間(20〜30時間)を満たせば自由に働ける新しい勤務制度を導入しました。

同病院では2009年に育児中の職員を対象に1日の勤務時間を90分短縮できる制度を導入した経緯がありますが、当時の制度では、月〜土曜日の出勤が義務付けられていたことにくわえ、定時に仕事が終わらないことも多いため、女性医師が結局退職してしまうということがありました。

そこで新しい制度では、常勤医師の勤務時間(40時間)を約半分に大幅短縮させ、勤務時間帯も自由に選べるように柔軟性を持たせました。子供が寝てしまえば手がかからない年齢の場合、夜の方が働きやすいケースも考えられるため、この時短勤務制度を利用すれば、夜勤だけという勤務形態でも大丈夫です。

医師不足の解消を目指す同様の動きは東海地方の他の大学病院でも広がりを見せています。例えば、名古屋大学医学部附属病院(名古屋市昭和区)と愛知医科大学病院(愛知県長久手市)では2013年度から、出身大学や年齢に関係なく復職を希望する女性医師を対象とした「復職支援プログラム」を開始しました。

プログラム参加者は、自身の専門とする診療科目とは関係なく、最初は多くの患者がやってくる内科外来の初診を担当しながら、育児などのブランクで鈍りかけた患者とのコミュニケーションスキルを取り戻していきます。その後、本来専門とする診療科を目指すことになります。

同プログラムを導入した名古屋大学医学部附属病院の卒後臨床研修・キャリア形成支援センターには、育児で10年近くブランクがある女性医師も参加しています。一度身につけた知識やスキルは数年のブランクがあっても、基礎の部分は残っているため、取り戻しは難しくありません。医学生を一人前の医師に育てる期間と比較すれば、数年のブランクのある方は即戦力です。現場復帰をご希望の方は、お住まいの地域に同様の支援制度やプログラムを導入している医療機関がないか、一度調べてみることをオススメします。

病院評価事業(ホスピレート)の第1号認定を受けた大阪病院

女性医師を含む全ての医療従業者が満足して働けるかどうかいう観点から、病院を経営トップの方針や組織運営、育児・介護・復職などの支援策など7つの基準で評価する「働きやすい病院評価事業(ホスピレート)」。

2011年現在、全国で15の医療機関がホスピレートの認証を受けていますが、その第1号認定を受けたのが大阪病院(旧:大阪厚生年金病院)です。

ご存知の通り、深刻な医師不足を解消しようと医学部の定員増が図られましたが、効果が医療現場に現れるまでにはかなりの年数が必要です。一方で女性医師支援は即効性のある対策となります。

同病院では、2003年から女性医師の働きやすい職場作りに取り組んできました。一回退職した女性が復帰するのは多少なりとも「壁」があります。そこで、育児休暇の充実や正職員短時間勤務制度の導入を図り、出産前後や育児中も勤務を継続できる体制を整えました。

一般にありがちな誤解として、女性医師の支援は「女性のため」だけを念頭に置いているわけではありません。女性医師の就労を促せば働き手が増え、他の医師への業務のしわ寄せは最小限にととどめることができます。すなわち、他の医師が短時間勤務を希望できる土壌も踏まれ、医師全体のワーク・バランスにも繋がるのです。

この取り組みが評判となり、2003年度には118人だった同病院の医師数は2008年度には約2倍の200人に急増し、そのうち女性が69人を占めています。また医師一人当たりの年間残業時間も400時間から360時間に減りました

経営者の中には「医師を増やすと人件費が上がり、経営を圧迫する」と考える方も少なくありません。しかし、医師の増員により診療できる患者が増えるので収入は増加します。

コスト面でも、医師は残業手当の割合が高いので、短時間勤務の女性医師を積極的に雇用しても人件費比率はほとんど変らず、一定の収益を確保できるということを理解することが大切なのではないでしょうか。

ジョブシェアリング制度を導入した聖隷横浜病院

女医が働きやすい環境を整えることで、3年間で医師数が約40人も増えた聖隷横浜病院。その要因としては、@最新の医療機器の購入などで全医師のモチベーションを揚げることを意識した、A院内保育施設を新設した、などが挙げられますが、最も効果があったとして注目されているのが、「ジョブシェアリング制度」の導入です。

男性医師のモチベーションも向上

医師のジョブシェアリングとは、常勤医師一人分の仕事を二人で担当するもので、週3日の日勤勤務と週1日程度の当直を行います。担当の曜日は、パートナーを組むもう1人の医師と相談して決める仕組みになっています。

労働時間は週30時間程度で、身分上は常勤職員として扱われるため、社会保険などの福利厚生は常勤医師と変わりません。給与は諸手当、賞与なども含めて規定の60%相当となっています。

この制度では、フルタイムの医師1人よりコストが高くなりますが、「フルタイムの常勤医師と同じように担当の患者を持つため、非常勤とはモチベーションが全く違う(院長)」というメリットがあります。また、入院患者の回診や急変の対応、当直も担当することで、現場感覚を維持することができるため、常勤に復帰しやすくなります。

聖隷横浜病院で実際にこの制度を利用している女性医師の方は「フルタイムで働きながら妊娠すれば他のスタッフに負担をかけるので、辞めることも考えたこともありました。ジョブシェアリングを利用すれば、医師としてのキャリアを保ちながら、人並みの睡眠時間もとれ、余裕を持って出産や家のことにも臨める。」と話しています。

復職研修システムが充実した福井県済生会病院

福井県外で働いていたある女性産科医が、出産後、両親の希望もあって同県に戻ったのは2009年4月のこと。その際、かつての職場である福井県済生会病院への復職を希望しました。

日本一の地域医療システムを目指しています

ただ、子供も2人の出産・育児でブランクが会ったため、復帰後すぐに通常の診療に携わることに不安を抱いていました。

そこで活用したのが同病院の「復職研修システム」です。最初の3ヶ月間は週3〜4日のみ、9〜16時まで勤務すると同時に、婦人科健診などの負担の少ない勤務に従事しました。しばらく後、外来診療に携わったり、手術の助手を務めるようになり、徐々に診療の感覚を取り戻していきました。

済生会病院は、2008年11月に彼女を常勤医として雇用することを決め、同病院の医師として始めて週32時間の短時間勤務を認めました。女性は現在、当直は免除されていますが、外来、病棟、健診を中心に産婦人科で勤務を続けています。

同病院では職員のモチベーションを高めることが医療の質を上げ、ひいては患者満足度の向上に繋がると考え、働きがいを持てる職場作りに取り組んできました。女性医師支援もその一環です。

全医師に占める女性比率が高まる中、女性医師対策に取り組まなければ人材が集まらなくなります。やる気のある女性医師を増やせば、ほかの医師の負担軽減になるだけでなく、より多くの患者を受け入れられ、経営面でもプラスになります。

院長のこうした考えの下、子供を持つ女性医師や看護師が仕事を継続できるように、産休・育休の取得を促進するだけでなく、早くから24時間保育所を運営してきました。

また子育て中の従業員を主な対象とした正規職員の短時間勤務制を導入したほか、厚生労働省の復職支援事業の補助を受けて復職研修も開始。先述の女性産科医も、この制度を利用しました。

病院全体としての制度以外に、個人の事情に応じて現場で柔軟に勤務形態を変えているのも同病院の特徴です。女性医師が多い産婦人科では、在籍医師7人のうち3人が女性で、2人が子育て中、そのうち1人は現在、育児休暇中ですが、週1回だけ外来を受け持っています。

同病院では今後、女性医師対策にとどまらず、男性も含めたスタッフのワークライフバランスの充実を図っていく考えです。具体例の一つとして、2006年にはリフレッシュ休暇制度を導入し、1週間単位の休暇取得を義務化しました。

国際学会に参加するためにリフレッシュ休暇を取得するケースも増えてきており、今後、ワークライフバランスを重視する若い医師が増えてくると、こうした制度の利用もさらに促進されるのではと考えられます。

そのほか、医師が診療のみに集中できる環境をつくるため、各診療科の外来を中心に30名を超える補助者(医療秘書、メディカルコーディネーター、診療情報管理士、医療情報課などの職員など)を配置し、予約患者のカルテの準備、予約外患者への問診、手術同意書の作製、検査のオーダー漏れのチェックなどを代行しています。

実際、同病院が全医師を対象として業務負担軽減に関するアンケートを行ったところ、80%近い医師が高い評価(診療科や代行内容によって数値は異なる)をしており、補助者の導入以降、外来が定刻通りに終わるケースが大幅に増え、外来終了後に入院患者に対応する医師からは、従来より丁寧に入院患者にあたれるようになったとの声も聞かれます。