医療格差の是正には民間病院の規模拡大と集約化が必要

厚労相が定めた公的団体を運営母体とする病院を「公的病院」と呼んでいます。以前は「国立病院」と呼ばれていた施設は、行政改革によって新たに国立高度専門医療センター、独立行政法人国立病院機構、国立大学法人などにカテゴライズされました。

国内の医療機関の7割は民間

これらのうち厚生労働省が運営し、高度先端医療の提供、治療法の開発を行う国立高度専門医療センターは「ナショナルセンター」とも呼ばれており、国立がん研究センター(東京)、国立循環器病研究センター(大阪)、国立長寿医療研究センター(愛知)など全国に6つあります。

地方自治体を母体とし、地域の基幹病院の役割を果たしている施設は「公立病院」ともいわれています。公立病院の職員は公務員で、事務部門の管理職は自治体の職員が大半を占めているのが一般的ですが、地方財政が厳しいことから、地方独立行政法人として運営を切り離したり、民間に業務委託して効率化を図る病院も出てきています。

一方、国内の病院の7割を占めているのが、公益法人、医療法人、社会福祉法人、個人などが開設する病院が「民間病院」です。国の医療機関の平均床数が424床なのに対し、民間病院は200床以下が7割を占めており、中小規模の病院が多いのが特徴です。

民間病院の多くは都市部に集中しており、公共的な目的の強い医療(救命救急)を民間病院に頼っている地域が多くあります。ただし、採算性が低い小児や僻地医療などを手掛ける民間病院は少ないため、医療の地域格差が生じています。

中小規模の施設が多い民間病院が、各診療科に専門医を置いたり、高度な医療機器を揃えるのは困難です。質の高い医療を提供し、地域格差を小さくするためには、民間病院の集約化により、人材や設備を集めて地域の拠点病院化を勧める必要がありますが、民間の病院ですので行政指導が難しいのが現状です。

同じ勤務医でも公立病院と民間病院(医療法人)では年収には差が生じています。厚生労働省の「医療経済実態調査」の結果では、公立病院の勤務医の年収は1,494万円、民間病院は1,544万円となっています。

背景には、地域住民に公平な医療サービスを提供するという公立病院の立場上、「非採算の診療科も開設さぜるを得ない」、「医師一人当たりの患者数が少ないため、利益が上がりにくい」などの理由で、赤字経営に陥っている公的病院の割合が民間病院に比べて高いことにあります。

配置基準と入院基本料が連動する大病院にとって看護師の確保は生命線

特定機能病院(高度な医療の提供が可能な医療機関)は医師や看護師の配置要件を満たす必要があるため、新卒入職時期に合わせて採用スケジュールを決定しています。病院側は給与水準が低い新卒で安定した人数を確保したい思惑がありますが、入職後数年間の研修計画にも抜かりなく、戦力として最も大きい中堅クラスの人材育成も視野に入れています。

病院の規模や地域で格差が拡大

中途採用を目的として、病院のホームページに看護師募集の専用ページを新設するところも多く、常に必要人数を下回らないように努力しています。

直接雇用の看護師は常勤がほとんどです。間接雇用となる派遣看護師は夜勤専従、常勤の負担を軽減するために活用されています。医師は常勤と非常勤があり、後者は外来のみの担当が多くなっています。

医師、看護師ともに採用方法や雇用形態は多様化する傾向にあります。従来、不足した医師は大学病院の医局からの派遣で補ってきましたが、臨床研修医制度の導入移行は医局に所属する医師が減少したため、自前で医師の採用活動を余儀なくされる病院が大幅に増加しました。

病院のホームページを通じた採用活動、公募サイトによる募集、大手医療人材紹介会社の活用、臨床研修医制度の指定病院となる、直接大学を訪問して説明会を行ったりするなどの努力を行っています。

配置基準と入院基本料が繋がっている看護師は、病院の規模が大きくなるほど新卒看護師の確保が重要となります。都市部の大型病院は勤務条件や教育体制で中小の病院より優位に立ちやすいため、中小規模、あるいは地方の病院は看護師不足に陥り、病棟の閉鎖に追い込まれる事態が問題となっています。